

『必殺仕置屋稼業』第21話。

黒沢映画等でも御馴染みの志村喬さん。
南町奉行所の筆頭与力が亡くなった事により奉行の鳥居耀蔵(志村喬)は有力者3人による選挙を行う事を発表する。
これに目をつけた泉屋(神田隆)の愛人.お袖(稲野和子)は候補の1人.日置に近付き後ろ楯になってもらおうとする。
お袖は泉屋を『奉行所の御用達商人』にし、自らは後妻に治まろうと言う狙いがあった。
その為に日置に勝ってもらわなければならず、他の候補の後ろ楯になっている檜屋を畳職人.勘助(内田勝正)を使い殺す。
おこう(中村玉緒)から檜屋からの依頼を受け、主水達は仕置きに挑む…。

ここで印象深いのは勘助を市松(沖雅也)が飲みに誘い、おでん屋台で飲食しているシーンであります。
普段は悪代官などで御馴染みの内田さんが衰えを気にしながらも裏稼業を続ける仕置人を静かに演じます。
勘助は市松から『まさかの』誘いを受けますが、さすがはプロの仕置人。
首筋に竹串を刺されないよう防具を首に巻いて市松の誘いに乗ります。
市松の腕を知っているだけに用心深く臨みますが、悟られないようにさりげなく首に巻く仕草が良いですね(誘ってくれた事への敬意かも知れません)。

勘助は最近の裏稼業についての衰えについて語りますが、若い市松は「俺には無縁」とばかりに聞き流し、一瞬で勘助の腹に竹串を刺します。
しかし、実は勘助の畳針も市松の腹部をとらえており、もう少しで相討ちになるところでした。
静かな会話の中での駆け引きみたいなものが見れて面白かったです。

いつもは貫禄十分でヤクザの親分とか地球防衛軍長官とかが似合う神田隆さんは今回は愛人に乗せられて悪事に加担してしまう、いまいち頼りない主人でした。
印玄(新克利)にボウリングのように投げられ、油で滑る床を一直線。最後は油樽に激突しストライクと同時に絶命。
とは言え、いつもと違い憎たらしい悪役と言う感じではなく『気の毒』に思った記憶があります。
一番の巨悪.お袖は主水に斬られて油樽に投げ込まれてしまう。
当然でしょうね。
ラストは開票結果を発表。
3人共に自分が入れた1票だけしか入らなかったらしく『赤っ恥』をかいて、鳥居に笑われてしまう羽目に。

あの『狂想曲』は何だったのかと思う…はずもなく、予想が当たり高笑いする主水であった。
この当時の加熱する選挙戦を風刺した作品でありました。

本作に出演していた内田勝正さんが1月31日に亡くなられました。
御冥福を御祈り申し上げます。


